こつぶがゴロゴロ。

主にネタばれ感想を呟いてます。

日出処の天子

(過去サイトに載せたものその4)




略して「処天」。

聖徳太子の若き頃を描いた名作です。


が。


普通の伝記漫画だと思って読んでしまうと、剣山で頭を殴られるほどに痛い目を見ます。

一体何が他の伝記漫画と違うのかというと。  

 

聖徳太子がゲイなのです。

しかも、超能力兼霊能力者なのです。

さらに、歴史上では対立関係にあった蘇我毛人に恋をするのです。

ついでに聖徳太子に最も愛されたと言われる妃、膳菩岐々美郎女が

ピーなのです。

 

その他にもまだまだどっきりポイントはあるんですが、とりあえずここまで。

これを読んだのは小学校低学年の時でしたが(リアルタイムではないです)、あの時はまさか絶世の美少女と見紛う麗しの厩戸王子が、 元1万円札のヒゲのおっさんだとはミジンコほどにも思いませんでした。

 一巻の裏表紙に描かれてた絵とコメントなんて自動的に脳内から消去です。デリートです。


母から真実を教えられた時は、一日中ブルーでした。


でも、この漫画のおかげで飛鳥時代の歴史は結構得意にはなりました。

今はほとんど忘れてるんですけど(笑)


 

ではストーリーについてちょこっとだけ。

 最初から最後まで厩戸と毛人の恋を中心に描いていますが、密かにもう一つ進行していくテーマがあります。


それは「母子」。


母である間人媛を怨み、軽蔑する厩戸と、子である厩戸を薄気味悪く思い、疎んでしまう間人媛。

 特に厩戸の母に対する気持ちは、そのまま女性嫌悪に発展し、ゲイ(?)となった程です。


何故、厩戸は母を誰よりも怨むのか。

何故、間人は厩戸を大げさなほど薄気味悪く感じてしまうのか。


その謎は、厩戸の持つ超能力兼霊能力に深く関係し、終盤で答えがはっきりします。


この母子の溝は、普通の親子のすれ違い以上に複雑なのです。


そしてラストは、毛人との結末以上にせつない母子の想いの結末が語られます。


多分、同性愛を扱ったこの漫画を幼い私がすんなり読めたのは、この母子関係のエピソードに魅かれて、物語の世界に 入っていったからだと思います。

 BS夜話で言ってたけど、これって801同人の先駆けだそうで…。

確かによく考えると、史実を大胆解釈したというよりは、史実を使って遊んでいる2次創作のノリに限りなく近いかな。


ここからは知っている人だけに通じるお話。

この漫画の完結編に当たる「馬屋古女王」では、聖徳太子の死後から始まり、上宮王家の滅亡を示唆させるところまでを描いています。

作中、前作の登場人物のその後が少しだけ垣間見えるのですが。

予想外というか、やっぱりというか…。

刀自古があんなに自暴自棄になってたなんて(涙)

厩戸に振られても、その後に生まれた子供達の父親は一応彼だと思ってたのに。

しかも、最後まで美郎女に嫉妬してたなんて。

(あ、いや、美郎女も好きですよ?処天で彼女が出てくる場面はほとんど印象深くて、ラストは涙が出てきました。)

でも一番気の毒なのは大姫ですよね。

彼女は世間体を取り繕うことさえ出来ない状況にさせられたんですから。

ああ、好きな登場人物は皆不幸になってる~。

処天に出てくる女性って、ホント業が深いです…。



ところで最近驚いたことがひとつ。

布都姫って多くの読者に嫌われてたんですね~。

母に聞いてみると、やっぱり布都姫が大嫌いだったという答えが返ってきてびっくり。


あと一番大好きな刀自古もそれなりに嫌われてたことに結構ショック。

ていうか刀自古はともかく、布津姫はごく普通の薄幸のお姫様って感じで、 全くアクがなかったように思うんだけど…。

だからと言って好感の持てるタイプでもないんですが。

やっぱり、厩戸と毛人との関係を揺るがした為に嫌われてるのか?


う~ん、絶対間人が嫌われてると思ってたんだけどな。

だって彼女は子供(厩戸)を理解してあげる努力を、 結局放棄してしまったから。


でもうちの母に言わせると、厩戸こそ間人のことを曲解して勝手にイジケてるだけ、間人は可哀想な母親、なんだとか。

母は厩戸王子大好き人間ですが、この点だけは「自業自得だ」と、ちょっと冷ややかな意見でした。

母親の視点から見ると、やっぱり見方が違ってくるのかなと思いました。


もう小学校の頃からずっと処天を読んでないけど、今読み返したら。

もしかして私も間人媛や布都姫に対する印象が、変わってくるのかな?