こつぶがゴロゴロ。

主にネタばれ感想を呟いてます。

妖怪道士 の感想。

 

  私が物心ついた頃に観た、香港のホラーコメディカンフー映画
個人的に思い入れのある映画のひとつであります。


VHSパッケージがオドロオドロしい雰囲気のイラストだったので、観る前は少し怖気づいてたのですが、ビデオを再生すると「テンポのいい展開」「手品を題材にした『魔術』の演出」「カンフーアクション」の3つに目が離せなくなり、ワクワクと楽しんで観ることができました。

 

粗筋としては、

 昔々、ある道観で封印されていた魔王が、監視役の老いぼれ道士の不在時に脱獄してしまいました。
道士の不在だった理由が「監視をサボり大好きな酒を飲んでいた」ということも相まって、道観のお偉いさんはとうぜん激怒。
責任とって魔王を捕えてこい!とドヤされた道士は、しぶしぶ魔王を追う旅に出ることになりました。

 一方、ある町では、嫁さん探しで揉めている祖母と孫の青年がおりました。
彼らは武術と魔術に長けた一族なのですが、代々生まれてくる子供は何故か男子1人のみ。
なので祖母は「早く結婚して子供を成せ」と青年に見合い話を沢山持ってくるのですが、乗り気でない青年はのらりくらりと逃げていました。
そんなことをやっている内、とうとう堪忍袋の緒が切れた祖母が「嫁さんを見つけてこないと死んでやる」と言い出した為、青年はしぶしぶ嫁さん探しの旅に出ます。

 そんな事情で一人旅をしていた道士と青年は、奇しくも同じ町に辿り着きます。
そこでは、町の大金持ちが娘の婿探しの為のオーディションを開いておりました。
娘の美しい横顔をチラっと見た青年は、張り切ってオーディションに参加するのですが。
実は、魔王が生贄を選ぶ為に大金持ちに仕組ませた罠であり…。

 という感じ。

この映画の監督であるユエン・ウーピン、道士役のユエン・チョンヤンは、後にマトリックスチャーリーズ・エンジェルなどのアクション指導で、ハリウッドでも有名になった兄弟。
また、青年役のサイモン・ユエンも2人の弟であり、ユエン・アクションチームのメンバーとして武術指導を行っていたらしいです(付け焼き刃知識)
そんな彼らが、まだワールドワイドで有名になる前の映画、ということになります。

 話も小道具も演出も、今観るとやっぱり大雑把というかチャチな部分が目立つのですが、それでも娯楽のセンスは抜群なので、観ている内に全く気にならなくなります。
むしろ、当時のチープさが絶妙な味付けとなっていて、下手なCG効果よりよっぽど目を惹く演出に。
作中に使われる術(手品モチーフ)に関しても、札をストロー状に丸め、壁に描かれた酒の絵に刺すと本物のお酒がジョロジョロ出てきたり、お小遣いのお金が手から沢山湧いて出たり、飲み物の色を赤や青に変えたりと、子供が思い描く夢の魔法が再現されていて、とてもワクワクします。
大人になった今、手品には必ずタネがあると理解していても。
あのシーンを見たらやっぱり引き込まれてしまいます。

 そして、クライマックスのリンキングリング(チャイナリング)を絡めたアクションは、本当に必見。
よくこんな発想を完全再現できたなと思うし、リングを使ったカンフーの振り付けを考えた人(監督かな?)には、ただただ脱帽です。
そりゃあハリウッドから声が掛かるよね、と思っちゃいます。

 他の見所としては、作中に出てくるお酒が凄く美味しそうに表現されている、というところ。
主人公の道士が酒飲み設定なので、飲酒やお酒を注ぐ場面がよく出てくるのですが、注ぎ方がシャンパンタワーのようで綺麗だったり、何より道士役のユエン・チュンヤン のお酒を飲む様が、本当に美味しそうに見えるのです。
それはもう、普段お酒が好きじゃない私も、映画を観た後にカップ酒を買いに出かけてしまうくらい(勿論、成人後に再視聴した時の話です)
酒好きな人にも、もしかするとたまらない映画なんじゃないかと思います。

 1人で観るのも良し、子供や友人など大勢で見るともっと良し。
頭を空っぽにして楽しめる娯楽映画なので、オススメです。
ただ、そのぶん話の流れが雑なので、その辺はあまり期待しない方がいいのかも。

ちなみに。
この映画には続編もあるんですが、登場人物が同じでも全く別の話になってたような記憶が…。
子供の頃に観たっきりなので、あやふやなんですけど。
もう一回観直してみたいな。

本当に、あの頃の香港アクション映画は面白かったです。