こつぶがゴロゴロ。

主にネタばれ感想を呟いてます。

パッセンジャー

 ※過去にTwitterで呟いた感想に加筆したもの。

 


 地球から遠い別の星へ移住希望する乗客達を乗せて、広大な宇宙をひたすら進む大型宇宙船。
目的の星まで120年を要する為に乗客とクルー全員をコールドスリープさせていたが、あるアクシデントで1人の男性客が目覚めてしまった。
地球を飛び立ってからまだ30年しか経っていないことを知った彼は、残り90年間を宇宙船の中で独りだけで過ごすという絶望に耐え切れず、ある日、一目惚れした女性客のコールドスリープ装置を壊してしまう。
目覚めた彼女はその事実を知らないまま、身に降りかかった不幸を彼と慰め合い仲を深めていくが…。

 


 昔からよく語られる怖い話で、「目覚めると地中奥深く埋められた棺桶の中にいて、脱出もできずそのまま朽ち果てる」というシチュエーションがありますが、
この映画はそれを砂糖水で希釈して、恋愛とSFでドラマチックに仕立ててます。

広い宇宙船とはいえ、船内で孤独に一生を終える事実に直面した主人公「ジム」が、禁断の方法に手を出したくなる気持ちはよく理解できるし、ジムに強制的に目覚めさせられたヒロイン「オーロラ」がその事実を知り、可愛さ余って憎さ100倍で彼を殺しかけた気持ちもよく分かります。

分かり過ぎて、途中、観るのが辛くなってしまう程です。

地球へ引き返すことも、助けが来ることも叶わない宇宙でそんな事が起こるのは、
棺桶や狭い空間に閉じ込められて出られない恐怖と似ているのだと思われます。

 

だからこそ、しばらく後に船長が登場した時は「おおっ!」と体が前のめりになるし、ジムとオーロラが感じたであろう安堵を観る側も感じ取ることが出来て、
これから話が一気に動く予感にワクワクできるのです。
実際、話の盛り上がりは大きくなりますし、それまでの緩い倦怠感(退屈ともいう)は吹き飛び、ラストまで突っ走っていきます。

主人公達の心情の移り変わりも、話を効果的に展開させるのも上手い映画だと思います。

 

ただ、一方で設定に関して気になった点がいくつかありまして。

 

何故ジムとオーロラは船長が起きてるにも関わらず「彼の権限でクルーを全員起こして船やコールドスリープ装置の修理をしてもらう」という発想に至らなかったの?

船長すらそういう行動を取らなかったということは、宇宙船を修理できるエンジニアを乗せてなかったの?

そもそも普通は、宇宙船や乗客にアクシデントが起きた場合に対処できるよう、
数人は必ず起きていてシステムを見張っているもの(1~2年経ったら他のクルーを起こして交代)ではないの?

宇宙船のオート機能に任せっきりなんてあり得るの?


…という疑問が観ている間ずっとつきまとい、ラストを迎えても納得できる答えが見当たらなかった為に、私の最終的な評価はイマイチなものになってしまいました。

せめて、OPで「見張っていたクルーがアクシデントで死亡した」場面があれば、このモヤモヤも軽減できたと思うのだけど。

なのでこの映画は、「万が一の事も考えずに発進した宇宙船の悲劇」という前提で観た方がいいのかも。

 

でもラストは綺麗な締め方でした。