こつぶがゴロゴロ。

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火の鳥 鳳凰編 について ~茜丸の輪廻転生と2週目~

 

 

 YOUTUBEのオススメで中田敦彦さんの「火の鳥 鳳凰編」の紹介動画が出てきたので見たんだけど、独り芝居が面白くてついつい見入ってしまった。
私も小学生の頃、家にあった火の鳥の未来編を読んで衝撃を受けたクチなので、ちょっとだけ親近感が芽生えました(笑)

 

 ところで、鳳凰編の感想について昔からよく言われているのが茜丸の輪廻転生。
始めの頃は仏師として純粋な心を持っていた茜丸が、地位と名誉を得てから段々変わっていき、あげく権力を借りて我王の腕を斬り落とすことまでやってしまいます。
そんな彼も最期は火事で焼死するのですが、そのときに火の鳥の放った言葉が残酷だと評判です。

茜丸が死ぬ間際に「まだまだやり残したこともある、また仏師に生まれ変わりたい」と切望するのに対し、火の鳥は「今後、お前が人に生まれ変わることは永久にありません」と宣告するからです。


私の場合、鳳凰編に関してはアニメ版から入ったんですけど、初めて例の場面を目にしたときはご多分に漏れず茜丸が気の毒に思えて。

代償にしても大き過ぎるのではないかと気が滅入ったのを覚えてます。


しかし、その後に原作の漫画を読むと「茜丸って実はそこまで悲惨なキャラではないのでは?」と思うようになったんですね。

 

 原作では茜丸正倉院鳳凰の図の前で夢を見る場面があるのですが、夢の中の彼は鳳凰を見るため遣唐使船に乗っており、船が嵐に巻き込まれた際に海に落ちて命を落としてしまいます。
気が付くと微生物に生まれ変わっていて、このときはまだ茜丸の記憶が残っているのですが、亀に転生する頃には人だったことも思い出せず、亀としての生を素直に受け入れました。
 次に小鳥に生まれ変わると母鳥に連れられて火の鳥に挨拶しに行くのですが、デジャヴを感じた小鳥が「ぼく、おばさん(火の鳥)のこと見たことあるよ。ずっと昔、おばさんを見たくてたまらなかったんだ」と言います。
火の鳥は「それは貴方が人だった頃の記憶よ」と答えるのですが、母鳥は「この子があんな恐ろしい動物(人間)の生まれ変わりだなんて!」とショックを受けるんです。


そこで夢から覚めた茜丸は、前世に火の鳥を見たことを思い出して完璧な鳳凰像を彫る流れになります。

 

私はそのシーンを読んだ時、「これは罪を犯した者の末路の描かれ方ではない」と思いました。
この漫画では人間の転生が至上だとは定義付けられておらず、価値観は動物ごとに異なると言ってるのだと感じたのです。

 

 また、死ぬ間際の茜丸に対し火の鳥は「もう人に生まれ変わるチャンスはありません、運命は最初から決められているからです」と言います。
この台詞で火の鳥茜丸を断罪したわけではなく、地球の輪廻が上手く回るよう誘導する役割を忠実にこなしてるだけなのだと理解できたように思いました。


 ここまで考えると「じゃあ夢で遣唐使船に乗っていた茜丸は何なの?」という疑問に行き着くのですが。
それは、未来編を読めばすぐに合点がいくようになってます。

 

 未来編の粗筋をざっくり言うと「間違った道を歩んだ人類が滅び地球の万物創成をやり直す」なのですが、滅亡前の人類史を1週目とし、創成後の人類史を2週目とすると、遣唐使船の茜丸は人類史1週目の記憶だったのではないかと思われます。

 

 つまり鳳凰編は人類史2週目の話であり、その時の火の鳥には我王を真の仏師にする目的があった為、 茜丸鳳凰像を彫らせて鬼瓦対決が発生するよう仕向けたのではないでしょうか。
そして人類史2週目で火の鳥が目的を達成した後、茜丸の「人」として成すべき課題は終わったのだと考えられます。

茜丸の輪廻は罪によって人に転生できなくなったのではなく、人に転生することがイレギュラーだったのではないかと。

 

 というわけで私のトラウマは漫画版によって解消されたのですが、これが自分自身の輪廻だったらと考えると…。

やっぱり茜丸同様に割り切れないし、恐ろしいと考えちゃいます。

 

 ちなみに、我王はずっと人に転生し続ける輪廻のようです。
ですが、醜い大きな鼻を持ち続けて志半ばで死ぬという、満たされない人生を永遠に繰り返すのだと火の鳥から宣告されます。
その理由は、人類史1週目で起きたと思われる「宇宙編」が発端となっているようです。
…この件の考察についてはまた別の機会に書こうかな。