こつぶがゴロゴロ。

主にネタばれ感想を呟いてます。

キリング・ミー・ソフトリー

この映画を例えるとしたら、「ジェットコースターなエロティック・サスペンス」かなあ?

とにかく主人公アリスの心情と行動が、ゴーっと猛スピードで突っ走っていっちゃうんです。

だって初めて出会ってから数時間後に、しかも相手の名前すらも知らないまま一緒にタクシーに乗り込んで、男の家で唐突に愛し合うんですよ?

しかもそれだけならまだしも、その翌日に男がアダムという英雄的な有名登山家だと知ると、「彼は運命の人なんだ!」といわんばかりにのぼせ上り、その日の夜、同棲中の彼に「別れるわ」と言いだして、さっさとアダムの家になだれ込むのが、もうもう。

ミーハー過ぎるぞ、アリス!

 …とまあ、序盤は「はあ??」の連続だったんですが。

しかしアダムと同棲し始めてから、アリスの行動に疑問を投げかける描写が少しずつ出てくるようになり、さらには謎の脅迫やアダムの暴力性も浮き彫りになって、アリスは段々と彼に疑惑を持ち始めていくのです。

そしてその疑惑は、思いがけない形で晴れることなり…。

二人の運命的な恋は幕を閉じるのでした。

 結局アリスは、アダムに官能に満ちた刺激的な関係を夢見ていただけで、本当は結婚するだけの愛と資格なんて持ち合わせてはなかった。

だから、アダムの灰色の部分を知った途端、今までは情熱的だと好意的に受止めていた彼の一途さを「怖い」と思い、逃げてしまった。

アダムはアダムで、アリスに過去や交友関係を明確にせず、かといって秘密を気取られない努力もせず、パーティでは疎外感を与えさせて、彼女の孤独と不安を取り除こうとはしなかった。

それなのに、「僕を信じてくれ」と都合のいい欲求を彼女に訴え続けていた。

そんな夢見がちなカップルだから、何事も唐突で、周りの目を気にせずガーッと突っ走っていったんでしょうね。

でも一番悪いのは、軽薄で短絡的な行動をとり続けたアリスだよなあ。

最後の「平地育ちの女は山男と生きられない。激しい恋は燃え尽きる定め。多分…。わたしはそう言い聞かせた」というアリスの独白は、いまだ陶酔している自分自身を皮肉っているように思いました。

ところで、アリスが最初とラストのシーンで巻いていた首のアクセサリーは、けっこう意味深でした。

「(ほどほどに)束縛されたい」という気持ちの表れだったんだろうか。

そしてアダム役のジョゼフ・ファインズ、最初は「濃いな〜…」と思ってたんですけど、ラストの寂しげな仕草と表情には、何ともいえない色っぽさを感じました。

魅力的な役者さんですね!

え?サスペンスの部分はって?

…気にしちゃダメです。(謎

というわけで。

家族と一緒に観るとフツーに気まずい映画なんですが(エロティックだし)、一人で観ると色々思いを馳せることのできる、なかなか味わい深い映画でした。

でも……最後に言わせて。

あの恋はいくらなんでも唐突過ぎ!

だいたい、アリスがアダムに一目惚れしていたという描写が弱いよ。

信号待ちのシーンで、アダムに見つめられてると気づいた時のアリスの笑顔と仕草がぎこちないんだもんだから、「アダムを不審に思っているのか」と勘違いしてしまったぞ。

あのシーンをもうちょっと印象付けるものにしていたら、後の展開が幾分かスムーズになった…かも。