どう贔屓目に見ても賛否両論な映画。
でも、個人的にはお気に入りです。
この映画を「素晴らしい!」と思うか「はあっ!?」と思うかの分かれ道は、作中の太陽の視覚表現にどれだけ魅せられたかで決まるんじゃないかと思います。
私は十分魅せられたから、登場人物の誰もが太陽によって殺されること(語弊があるかな)を
望んだことに凄く説得力を感じられたし、ラストで感動することができました。
宇宙で輝く太陽は、寿命が尽きかけていても、すごく壮大で雄雄しくて、そして神々しかった。
あんな凄すぎるものを目の前にしたら、自己犠牲だとか身を焼かれる恐怖だなんてポーンと飛び越えて、ただただ憧憬を抱いたまま身を任せたくなるのかもしれない。
それに、この物語で描かれるクルー達の生への執着による争いって、結局は全員が
「太陽特攻以外で死ぬなんてとんでもねーよ!!」という、死を前提にした考えが根幹にあるんだよね。
そう考えると、あの船に乗っていた人達は良い奴も悪どい奴もズルイ奴も、元々は自己犠牲精神を持つ責任感の強い人達で、普通のホラーやパニック映画で描かれるような、本能丸出しの生存競争はしてなかったわけで。
そんな彼らの心理を左右する「太陽への畏怖」を、あそこまで形に表して描写できるなんて凄いです、本当に。
太陽の圧倒的な存在感を欠いてしまえば、彼らの心理描写がどんなに巧みでも途端に陳腐化して、話に説得力がなくなると思うもん。
「宗教観」というテーマを意識しながら観ると、本当によく考えられて作られてるんだなあと思います。
んで。
反対に、なぜ太陽に魅入られなかった人が「はあっ!?」となるんじゃないかと思う理由なんですが。
物語が進むと、イカロス2号にクルー以外の何者かが乗っていることが判明するんだけど、その謎の者の正体が………う〜ん、なんというか。
この監督の作品って(といってもサンシャインと28日後…しか観てないけど)、人物描写はとても的確で説得力があるのに、必ず妙ちくりんな要素を投入してストーリーの流れを唐突にする傾向があるみたい。
それさえ無ければ「これ良作だよ!」と、堂々と人様に薦めることができるのに。
まあ、あれこそが監督のこだわり部分なのかもしれないけど…なんだかなあ。
いや、一応、謎の○○も良いキャラではあるとは思うんですよ。
7年間ずっと独りで神と対話していたらしいし、長い間イカロス一号で太陽を敬いながら過ごしたことを考えると、彼が出した結論も間違ってはないと思うし、あんな行動に出るのも分かります。
だけどね。
あの超人的な強さとタフネスさはいくらなんでも有り得ないだろー!
神通力を身に着けたとか太陽の耐性がついたとか超好意的にかつ飛躍的に解釈しても、アレはシュールの域に達してるって!
もうちょっと普通の身体能力でいーよ、普通で。
と、私は思ったのでした。
ということで、この映画の評価は太陽の存在と謎の人物の受け止め方で、極端に分かれるかと。
私は結構良かったと思います。
お目当ての真田さんも見れたし、割と満足。
ちなみに私はこの映画を観て、傑作と名高い「惑星ソラリス」と、そして子供の頃に途中で挫折した「クライシス2050」をもう一度観てみようかなって気になりました(笑)