こつぶがゴロゴロ。

主にネタばれ感想を呟いてます。

ぼくは怖くない

 本でも映画でも、タイトルに惹かれて衝動買いをしてしまうということが誰にでもあると思います。
その作品が当たりか外れかはまた別問題ですが、心の琴線に触れる魅力的なタイトルというものはちゃんと存在するものです。

私にとっての「ぼくは怖くない」も、まさにそんな感じ。
レンタルビデオショップでふと視線を転じると、このタイトルが真っ先に目に飛び込んできました。

ええ、衝動借りしましたとも。

 

 民家がたった数件しかない寂れた村でも、子供達は元気に走り回って夏休みを謳歌する。

10歳のミケーレも、そんな子供の一人だった。

はずでした。

 

 ある日、宝物があると信じて覗き込んだ暗い穴の中で、鎖に繋がれた少年フィリッポと出会ってから、ミケーレは知らず知らずの内に大人の世界に徐々に足を踏み入れることになってしまうのです。

両親をはじめとする、村の大人達の秘密を知ってしまったミケーレ。

心を通わせたフィリッポを助けるべく、彼は徐々に大人への道を歩き出し、行動を起こします。

たとえそれが、両親を裏切る行為に当たったとしても。

 


 そんな子供の成長を描いたこの映画。
出てくる子供達全員が、本当に愛くるしくて魅力的なんですよ。

ミケーレも妹のマリアもフィリッポも村の子供達も、みんな素直で可愛い。

いかにも子供らしい行動と言葉に「古き良き時代の子供」って感じがすごく出てて、微笑ましいのです。(特にマリアは、小さな顔と大きなメガネのギャップもあって一番可愛らしい。アラレちゃん(笑))

 その一方で、思春期に差し掛かった子供らしい、クールというか厭世的な見方をする場面や、友人同士の裏切りもあったりして、それがますます子供達の描写をリアルにしています。

 

対して、大人達の描写も秀逸。

 

おおらかで寛大な頼れる父と、厳しくてうるさいけれど子供の安否を気遣う母と、近所の大人達。


ミケーレの目線で語られてるため、序盤の描写で大人達は「良い大人」「悪い大人」としか区別されてませんが、彼が成長するにつれて「良い大人」が「悪い大人」と大して変わりないことが、徐々に浮き彫りになってきます。

村の大人の男達は、夢を抱いて元気に動き回るが現実を直視せず、女達は現実を見つめ過ぎて希望を見出せなくなり、諦めの心境に至っている。


 不条理なことを嫌う子供達と、鬼子母神を髣髴とさせるような大人達。


両者を対比することによって、子供達の強さと大人達の弱さを浮き彫りにするストーリー展開は、本当に巧み。

ラストで一気に爆発する、子供の素晴らしさと大人の哀しさには、ただただ涙でした。

終わり方がまた素晴らしいんですよ。


そして、「ぼくは怖くない」。


このタイトルの意味は、物語が進行するにつれて変化していきます。

その変化を考えてみるのも、楽しいかもしれません。

 


レンタルビデオショップにひっそりと置いてあったこの映画。
タイトルだけで選びましたが、大当たりでした。