スペインから来た自由奔放な女性カルメンは、金持ちで誠実な恋人バーナビーからプロポーズされ、快く受け入れた。
ある夜、レストランで女友達と独身最後のパーティを楽しんでいたのだが、余興で「店内で一番の美男子とキスをする」というルールに従って、カルメンはたまたまその場に居合わせた青年キットを指名する。
最初は軽いキスで済ませるはずだった。
だが唇が触れた途端、周囲の目を忘れるほど深くはまり込んでいき、我にかえったカルメンは大きく動揺する。
バーナビーには感じなかった情熱が、キッドで燃え上がってしまったことを確信してしまったのだ。
その夜がきっかけで、カルメンはバーナビーの目を忍んでキットと会うようになるのだが、一方で、その様子を静かに見つめ続ける不気味な存在があった。
「結末を決して言わないでください。」
こういう謳い文句がついてると、「衝撃の結末」の新鮮さが薄れるからやめたほうがいいのでは…と思うんですが、オチが見えても満足できる良質な映画もたくさん存在するわけです。
この映画もまさにそんな類のもの…
と思ってたら、ラストのオチで評価が微妙になってしまいました。
最初の「衝撃的なオチ」までは良いんです。
そこで終わってれば素直に良作だと思えました。
だけどその後のひねりが、ちょっと。
あれのせいで、ラストの締まりがいまいちになってしまった感じ。
まあ結果として、誰に感情移入をしていても、幾分か溜飲が下がる思いのする無難な作りになったとは思うけど…。
全員に嫌悪感を持っていた人は、最後まで後味の悪い映画になるでしょうね、きっと。
私はバーナビーに肩入れしてたので、後味感はまあまあってとこでした。
キットとつるんでた2人組が好きな人は、スタッフロールを観るといいのかも。
ラストが微妙ではあるものの、一つ目のどんでん返しまでは良いと思うので、一応オススメ映画だと思います。
どんでん返しの他に、カルメン役のナタリア・ベルベケの化粧栄えにも驚いたりできるので、彼女の顔にも注目です。
ここからはネタバレ感想。
カルメンがキットと共謀してフォードと二人組を見事に陥れたってのには、どうも納得できませんでした。
いや、もともと私がカルメン嫌いだからとかそんなんじゃなく。
あの三人の裏をかいて会場の人々の虚をつけるほど、カルメンが要領の良い女性だとは思えなかったから。
名前がずばり「カルメン」だし、ホテルでの悪知恵やナイトクラブでの踊りでアピールはしてたんだろうけど、それでも大勢の人々を華麗に欺くファムファタールっぷりには、いまいち説得力を感じなかったです。
個人的にラストで拍子抜けしたのもこれが原因でした。
せめてキッドとの密会をバーナビーに問いただされても、「酷い!私を信じてないのね」と泣いてその場を押し切るような狡賢さを描いてれば、カルメンの完璧な復讐劇も納得できたんだけどなあ。
でもフォードがカルメンをヒロインに選んだ理由は、かなり納得。
自分の筋書き通りに行動してくれるであろう、情熱的で奔放な女性だから目を付けたのだとフォードは言ってましたが、多分その他にも、非人道的な撮影の対象が、自己中でフラフラしてるカルメンであれば、世間の同情と批判をかわせるだろうという計算もあったんじゃないかと思うのです。
そこが、フォードの狡猾なところなんだろうなと考えてます。
この映画、カルメンが理性的に振舞ってる場面を一つでも入れていれば、冗長な感は拭えなくてもラストがピシっと決まっただろうになあ。
悪女成分がちょっと足りなかったと思います。